14系15形 ブルートレイン「たらぎ」


かつて東京と熊本を結んだブルートレイン「はやぶさ」。末期に使用されていたJR九州所属の14系15形を再利用して登場した簡易宿泊施設が、この「ブルートレインたらぎ」です。くま川鉄道の線路に並行して3両の14系が並んでおり、開放型B寝台またはB個室「ソロ」に宿泊できます。
この「ブルートレインたらぎ」、「(マニア的には)日本唯一の14系15形に宿泊できる施設」という意味でとても貴重なのですが、それ以上に興味深いのは多良木町が運営しているということ。いわばブルートレインを使った町おこしであり、今後の展開が非常に興味深いです。さっそく見ていきましょう。


客車脇には「ブルートレインたらぎ」の駅名標と、昔懐かしいデザインの郵便ポストが来場者を出迎えています。
モケット


(左)「ソロ」 (右)開放型B寝台
撮影日時・場所
撮影日:2011年9月11日
撮影場所:くま川鉄道 多良木駅付近 ブルートレイン「たらぎ」
備考
当項で紹介する写真は、いずれも10年以上前に撮影したものです。現在とは異なる場合があることをご承知おきの上ご覧ください。
B寝台「ソロ」


まずはB寝台「ソロ」の廊下から。車内は現役時代から大きく変わった点はありません。
ブルートレインたらぎの営業開始直後は、宿泊施設の安全基準の関係で【個室ドアを撤去~各個室はカーテンで目隠し】としていた時期がありました。現在は対応が完了(=後述)し、ドアが復活しています。
ブルートレインたらぎに限った話ではありませんが、この手の保存車は 「車両」ではなくあくまで「建造物」の扱いとのこと。そのため、車内には「非常口」のピクトグラム(右/下)が新設されています。

というわけでこちらが「ソロ」の1階です。現役時代との違いは、「シーツが最初からセットされていない」「シートカバーがない」「コンセント新設」あたりでしょうか。
ちょうど西日が入る向きということもあって、個室内に入った時の雰囲気や気分はもう「寝台列車の夕方」そのものに感じました。


シーツと寝具をセットした状態(左/上)と、個室内の設備。折り畳み式テーブル、鏡、ゴミ箱、コンセント(新設)、非常用ボタン(使用不可)などとなっています。ゴミ箱は、実際にゴミ箱として使用可能でした。


アラーム・オーディオパネル(左/上)と天井の様子(右/下)。アラーム・オーディオはパネルそのものは残っているものの、消灯しており使えませんでした。スタッフの方によると、JR側で配線を切られた状態で搬入されてきたとのことです。
天井は建造物として使用する都合上、非常用の電灯や煙探知機が新設されています。
ちなみに、同じくブルートレインを宿泊施設に転用した「>>阿久根ツーリングSTAYtion」の場合、各個室のナンバーロックは配線が切られていたものの(NPO法人BigUp担当者談)、個室内のアラームは使用可能(取材当時)でした。
個室内の設備をどの程度“生かした”状態で譲渡するかは明確な基準があるわけではなく、JRの担当者の“裁量”の要素が大きいものと思われます。


取材時に私が宿泊したのは1階席でしたが、スタッフの方のご厚意及び許可のもと、2階席も撮影させていただきました(左/上)。お話を伺ったスタッフの方によると、「1階個室よりやや圧迫感があるので、景色を取るか圧迫感のなさを取るか、好みがけっこう分かれる」とのことです(笑)。
写真(右/下)は、廊下上のスペースを使用した荷物置き場の様子ですが、見ての通り天窓が新設されています。これは設置が法的に義務付けられた「非常出口」だそうで、2階個室の全部屋に新設したとのこと。これがないと各個室に扉を設置できず、そのため(冒頭で説明した通り)一時期全部屋の扉を撤去してカーテンで目隠しをしていたということだそうです。
「鉄道車両」を「宿泊施設」に転用するのも、なかなか一筋縄ではいかない、というのが垣間見えます。
開放型B寝台


変わってこちらが開放型B寝台の車内です。こちらも宿泊用として使われており、「ソロ」と同一料金です。廊下にはやはり「非常口」のピクトグラムが新設されていますが、それ以外は特段何か改造されているわけでもなく、かつての風情を色濃く残しています。
こちらはどちらかというと大人数のグループが好んで利用するようです。私が利用した時も4人連れくらいのグループが何組も陣取って、よもやま話に花を咲かせていました。

下段寝台の様子。JR九州の14系15形で見られたタイプで、モケットの変更、化粧板の貼り換え(ベージュ)などを施していますが、それ以外はデビュー当時から大きく変わっていません。
ちなみに現役時代は背もたれ部分に横長のシートカバーがついていましたが、「ブルートレインたらぎ」では省略されています。


上段寝台(左/上)と窓際のテーブル・ハシゴなどの様子(右/下)。開放型B寝台にもコンセントが新設されています。
受付・食事スペース


中央の客車は受付・食事スペースとして使用されており、チェックインもこちらで行います(左/上)。元々開放型B寝台であった車両を改造したものですが、こうして見ると車内が意外に広いことがお分かりいただけるかと思います。
写真(右/下)は、いわゆるフロントの様子。フロント直後の2区画だけ寝台が残されていますが、こちらは業務用の倉庫として使われているそうです、


食事スペースのテーブル(左/上)と天井の様子(右/下)。ベンチの座面は、「ソロ」と同じモケットが貼られているのが面白いところです。
寝台は撤去されたものの通路上の荷物スペースには、三重の通り現在も業務用の物品が。寝台を大規模に撤去しているものの、それ以外の設備は現在も生かされているのは好印象です。
トイレ・洗面所



客車内のトイレや洗面台は残っているものの、使用はできません(左/上・中)。トイレ・洗面所はブルートレインに隣接した建物内のものを使用します(右/下)。
概説
デビュー年:2010年(施設)
「ブルートレインたらぎ」とは、くま川鉄道多良木駅前にある簡易宿泊施設。多良木町が運営しており、かつて寝台特急「はやぶさ」「さくら」で使用された14系15形客車を使用している。
編成は3両で、共通スペース、B寝台「ソロ」及び開放型B寝台。開放型B寝台、「ソロ」いずれも宿泊が可能。宿泊に使われる車両の設備はほぼ現役当時のまま残されている。毛布やシーツなどは宿泊料金に含まれているため、持ち込みの必要はない。
宿泊料金は「ソロ」、開放型B寝台ともに同一料金。最寄りのコンビニまでは徒歩10分程度。施設内に風呂はないが、「えびすの湯」(銭湯)が徒歩圏内にある。
「ブルートレインたらぎ」公式HP:
http://www.bluetrain-taragi.com/