キハ85系「(ワイドビュー)ひだ・南紀」 普通車 編

キハ85系「(ワイドビュー)ひだ・南紀」 – グリーン車/普通車/洗面台ほか

昼下がりの飛騨古川駅にただずむキハ85系(左)。写真(右)は、映画「君の名は。」の聖地として知られたアングルで撮影してみました。飛騨古川駅の改札を出て右手に進むとすぐ跨線橋があり、その上から撮影できます。

モケット

各種座席モケット

撮影日時・場所

撮影日時:2023年2月・3月

場所:飛騨古川駅 「ひだ」9・19・20号ほか

備考

特にありません。

「ひだ」仕様 普通車(青)

キハ85系の普通車の内装には、「ひだ」用に投入された「青モケット」「赤モケット」「南紀」用に導入された「グレーモケット」の3パターンが存在します。

まずは「ひだ」用の青モケット車。車番が偶数番号の車両がこの内装です。明るい青と大きなチェック柄のためか、全体として非常にメリハリのある車内に仕上がっているように感じます。

車内を反対から見た様子(左/上)と通路の様子(右/下)。座席背面は樹脂製と思われるバックシェルとなっており、正面から見た場合と比較してモノトーンな雰囲気です。

このバックシェル、昔はもう少し明るい色だったと記憶しているのですが、全体的にくすんで見えるのはやはり経年化によるものでしょうか。

「ひだ」仕様 普通車(青) 座席

座席の様子。(左/上)が一般席区画、(右/下)が車端部となります。

シートピッチは1000mmで、これは以後のJR東海の特急型車両における「標準」となりました。付帯設備は背面テーブルとフットレスト。シンプルですが、広いシートピッチ故かリクライニング角度も深めに取られており、着座した時の居住性は悪くありません。座面の詰め物も、経年化を感じさせない「張りの強さ」が最後まで保たれていたように感じます。

座席を正面から見た様子(左/上)と回転した様子(右/下)。

この座席、ヘッドレスト部分のクッションが(背もたれから)独立しているように見えるのが特徴です。背もたれ部分とヘッドレスト部分で、詰め物の固さや張りが異なるというわけではないので単なる「見え方」の問題かもしれませんが…。実際にヘッドレストだけ取り外せるのかどうか気になるところです(笑)。

荷物棚(左/上)と窓間のコートかけ(右/下)の様子。コートかけは銀色です。

「ひだ」仕様 普通車(赤)

変わって「ひだ」用の赤モケット車。車番が奇数の車両の内装です。

キハ85系のデビュー後しばらくは上述の青モケット車と交互に連結され、号車の奇数・偶数で雰囲気を変えていました。現在は「南紀」用の車両も含めて完全にごちゃ混ぜで運用されており、この法則は崩れています。

写真の赤モケット車は、近年「南紀」メインで運用されているらしく、キハ85系最末期の「ひだ」ではほとんど見かけませんでした。
ちなみに私は、(乗車しない「南紀」が2両とも赤モケット車なのを名古屋で何度も目にしつつ)3回目の取材でようやく「ひだ」運用の赤モケット車に当たっています。

車内を反対から見た様子(左/上)とデッキと客室の仕切扉(右/下)。写真は半室グリーン車で撮影しているため、グリーン車側とデッキ側で仕切扉の形状が異なっています。

「ひだ」仕様 普通車(赤) 座席

座席の様子。一般席区画(左/上)、車端部(右/下)とも、モケットが異なるほかは上述の青モケット車と共通の仕様です。

各席にはバー式のフットレストが設けられており、下げた状態で固定することもできます。もっとも、末期は経年劣化からか、足を乗せていないと勝手に復帰してしまう個体も散見されました。

座席を正面から見た様子(左/上)と回転した状態(右/下)。正面から見ると、センターアームレストが非常に細いのがよく分かります(苦笑)。

「ひだ」仕様 車内LED案内表示

デッキと客室の仕切扉上にはLEDによる案内表示があり、次駅案内・到着案内のほか沿線の情報などが表示されています。このLED表示装置の体裁は「ひだ」仕様の車両だけでも2パターンあり、仕切扉上のスペースによって使い分けられていたようです。

なお(左/上)の「3号車」と「禁煙サイン」、(右/下)の「指定席」と「禁煙サイン」の間には、かつてデジタル式の時計表示がありました。現在は(理由は不明ながら)廃止されており、上からシールが貼られてデッドスペースとなっています。

「南紀」仕様 普通車

続いて、「南紀」仕様の普通車の車内を見ていきます。「ひだ」仕様とは打って変わって、グレーをベースとしたモケットの座席が展開。雰囲気に「派手」の要素は全くなく、非常に落ち着いた雰囲気に仕上がっています。
もっとも、白系の化粧板や天井にグレーの座席を組み合わせた結果、ずいぶんとモノトーン、悪く言えば殺風景な車内にも感じます。

その他、目につくところでは仕切扉の形状の変化、LED表示装置(後述)が横長の一列表示になっているなどの違いがあります。

車内を反対から見た様子(左/上)と天井(右/下)。「ひだ」仕様の普通車は座席背面がバックシェルとなっていましたが、こちらは座席モケットを背面に回り込ませたオーソドックスな仕様です。

「南紀」仕様 普通車 座席

座席の様子。一般席区画(左/上)と車端部区画(右/下)です。雰囲気の比較用に、車端部の座席は昼間に撮影した写真を掲載します。

座席の基本的な見付は「ひだ」仕様車と大きく変わりませんが、ヘッドレスト部分が背もたれと一体成型になり、窓間に小テーブルが設置されている(後述)など、細かい変更が見られます。

座席を正面から見た様子(左/上)と回転した様子(右/下)。カーテンの色はパープル系です。

この2枚の写真で座席の色がかなり違って見えますが、これは写真の都合です。写真の写り方次第でモケットが「青系」にも「グレー系」にも見える、撮影する側にはちょっと厄介な座席なのですが(笑)、実際に車内で見る印象は写真(左/上)の方が近いかと思います。

「南紀」仕様 固有の設備

先述した窓間の小テーブル(左/上)。この窓間を中心に、座席を向かい合わせにした場合の配慮と思われます。もちろん一人利用時に飲み物をこちらに置き、シートバックテーブルを出さず広々と過ごす、といった使い方もできます(笑)。

写真(右/下)は「南紀」仕様車のLED案内表示。「ひだ」仕様車と比べてスタイリッシュにまとまっているほか、LED表示装置の解像度が上がり、字体も明朝体になっています。このスタイルは、後年の373・383系にもそのまま受け継がれました。

普通車 展望席区画

運転台直後の区画は、ご覧の通り前面展望が望める座席となっており、「南紀」仕様車の全室グリーン車と同じく、こちらもファンの間で通称「展望席」と呼ばれていました。

写真(左/上)が「ひだ」仕様車、(右/下)が「南紀」仕様車の様子となります。展望席の窓枠が「ひだ」仕様車は黒、南紀」仕様車は周囲の化粧板と同じ白系となっているほかは大きな違いはありません。

運転台直後の座席。テーブルとフットレストは車端部区画のそれと共通ですが、運転台側には運転仕様の遮光幕に加えて、客室内にもカーテンが設けられており、乗客は必要に応じて閉めることができます。例によって、(左/上)が「ひだ」仕様車、(右/下)が「南紀」仕様車になります。

普通車 車いす対応区画

2001年頃からの改造で取り付けられた車いす対応区画の様子。普通席2列を撤去して車いす対応席としており、仕切扉の拡幅、ハイデッカー構造の撤廃などが行われています。

なお、この車いす対応区画には当然赤モケット及び「南紀」仕様のグレーモケットの座席も存在します。私は取材のために3回「ひだ」に乗ったのですが、3回とも車いす対応区画が青モケットの車両が来てしまったため(苦笑)、ここでは“一例”として青モケット車の様子をご紹介します。

車いす対応席(左/上)とその全展開状態(右/下)。元は片側4席あったスペースにわずか1席なので、一人当たりの専有スペースでは「南紀」仕様の全室グリーン車をはるかに上回る広さです(笑)。

フットレストとテーブルは両側に装備されていますが、いかんせん遠すぎて実際の使い勝手は今一つでした。

おまけ

「ひだ」や「南紀」は先頭車(貫通型)が編成中間に連結されている場合がありますが、その場合はヘッドマークを車内から見ることができます。(左/上)はヘッドマーク部分のアップ。私が取材した便は所定4両編成ですが、当日は4両編成の前に先頭車1両が増結されていたため見ることができました。

(右/下)は「ひだ」19号で名古屋を出発した車内の映像。ワイドビューチャイムから始まる名古屋出発後の雰囲気をお楽しみください。

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概説

デビュー年:1989年

「ひだ」「南紀」で使用されていたキハ82系の置換用として1989年にデビュー。

車体は軽量化を狙ってステンレス製を導入。観光需要の高い高山本線・紀勢本線の投入を前提に設計されたため、側窓は大窓を採用。窓下に赤帯を配す、373・383系にも受け継がれた「ワイドビュー」シリーズの元祖である。

1989年から「ひだ」、1992年から「南紀」に導入され、それまで使用されていたキハ82系を置き換えた。
以後、一貫して同列車に充当されてきたが後継のHC85系登場により「ひだ」からは2023年3月改正で引退。「南紀」からも同年6月に引退予定となっている。

高山本線で運用されていた本系列は2023年3月以降、臨時「ひだ」に充当予定の一部編成を除き廃車となる見込み。なお、そのうち4両が京都丹後鉄道へ譲渡されており、同社での運用開始に向けた準備が進められている。

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