24系「小坂鉄道レールパーク ブルートレインあけぼの」 – A寝台/B寝台「ソロ」/B寝台


かつて上野から青森までを上越線・羽越本線・奥羽本線回りで結んだのが「あけぼの」ですが、この「ブルートレインあけぼの」はその客車を使って2015年にオープンした宿泊施設です。秋田県・小坂鉄道小坂駅の跡地に設けられた「小坂鉄道レールパーク」内に併設され、日々多くの利用者で賑わっています。
この「ブルートレインあけぼの」の特筆すべき点は、何といっても24系寝台車が「動く状態」で保存されていること。昼間は小坂鉄道レールパークのホーム突端に設けられた車両展示場で公開されていますが、夕方チェックインの時間と、翌朝チェックアウトの時間に、小坂駅ホームに機関車牽引で移動され、宿泊者は「動く24系」に乗車することができます。
さて、このページでは「動く24系のホテル」こと「ブルートレインあけぼの」の車内を、細部まで詳しく見てみることにしましょう。
モケット


(左)モケット (右)カーテン
撮影日時・場所
撮影日:2016年07月09~10日
撮影場所:24系25形「小坂鉄道レールパーク ブルートレインあけぼの」車内
備考
当サイトで紹介している内容は、取材した2016年当時の内容です。現在は車内での過ごし方など各種規定などが変わっている場合があるため、最新情報は公式サイトをご確認ください。
A寝台「シングルデラックス」


ではまず、「あけぼの」の最上位クラスであったA寝台「シングルデラックス」から見ていきます。保存車にはスロネ24 551が選定されていますが、この車両は元々開放型A寝台であったオロネ24に出自を持つため、側面にはその面影が残っているのが特徴です。
ブルートレインの「シングルデラックス」は全国的にもこの小坂が唯一の存在であり、貴重な“生き残り”の車両と言えます。

個室に入っていきます。チェックインの時間が17:00と(寝台列車にしては)早めなこともあり、デフォルトではご覧の通り「座席状態」でセットされています。車窓から見える旧・小坂駅構内の景色も相まって、乗車した雰囲気はもう「寝台列車」そのものと言っても過言ではありません。


背もたれ部分を倒してベッド状態した様子(左/上)とベッドメーキングした状態(右/下)になります。ベッド幅は76cmとB寝台+6cmですが、実際に横になってみると数値以上の広さを感じました。ベッドメーキングはセルフサービスとなっており、個々人が横になりたい時間にセットすることができます。
ちなみに深夜の消灯時間が近くなると、あの懐かしいハイケンスのセレナーデから始まる「模擬 おやすみ放送」がスタッフの方により放送されます(※)。ブルートレインで過ごす時間に、一つ華を添えるサービスと言えるでしょう。
(※「おやすみ放送」は都合や状況により実施されない場合もあるそうです)


「シングルデラックス」は各個室内に補助ベッドが設けられており、最大2名で利用することができます。小坂鉄道レールパークの「ブルートレインあけぼの」でも、現役時代と同じく追加料金を払うことで2人での宿泊が可能です。
現役時代は、一人利用のイメージが強かった「シングルデラックス」。しかし、私がこの小坂鉄道レールパークのそれを取材した時は、(特に注意して見ていたわけではありませんが)家族連れやカップルでの利用をちらほら見かけました。この補助ベッド、意外と小坂に来てからの方が本領を発揮しているのかもしれません(笑)。
個室内の設備


ベッド脇にはテーブル(左/上)、車内設備の操作パネル(右/下)が備わります。操作パネルの各スイッチは現役時代と変わらず使用でき、「時計は使えません」という表示がありながら実際にアラームも鳴動しました(いずれも取材当時)。
このほか、現役時代はラジオやBGM(イージーリスニング)が提供されていましたが、小坂への移設後は特に何も再生されていないようです。


姿見用の鏡(左/上)とSOSボタンほか(右/下)。宿泊者向けのリーフレットには、このSOSボタンに関する記載は見当たらなかったのですが、現在も稼働するのでしょうか。
鏡の脇に備わる2口コンセントは現役時代から存在しており、カメラとスマホの同時充電も可能です(笑)。ちなみに後述するB寝台「ソロ」には個室内にコンセントがないため、電源確保が気になる場合は「シングルデラックス」を利用すると良いかもしれません。


ベッド上の小テーブル(左/上)とフットライト(右/下)。メガネなどを置く用途を予想したものでしょうか。
テーブルの縁取りなどは金色で、この車両が改造されたバブリーな時代を偲ぶことができます(笑)。
「シングルデラックス」室内 洗面台


洗面台の様子(左/上)と展開してみた様子。設備維持の観点から、小坂鉄道レールパークに移設されてからは使用禁止となっています。
扉とハシゴ



個室内のドア(左/上)まわりの様子。壁側には2段ベッドとして使用する際のハシゴが収納されいます(中)が、よく見るとハシゴの裏にもドアが設けられています。これは、隣の部屋とのコネクトドア。1号室を除く全ての部屋に設けられ、双方の部屋から鍵を解除すると2部屋をつなげ、4人部屋として使用できる仕組みです。
このドアのおかげで個室の防音は今一つであり、特に深夜帯は隣室の住人がクシャミをするのが普通に聞こえてきます(笑)。ドアとはあまり関係ありませんが、特に消灯時間後はなるべく静かにしましょう。
小坂への移設後は、利用者向けリーフレットには特に記載がなかったことから使用されていないものと思われます。
廊下


廊下(左/上)とドアノブ(右/下)の様子。通路をざっと見渡した限りでは、現役時代から特に変わっている点は見受けられません。
電球色の薄暗い照明に金色のドアノブ、手すりなど、豪華な雰囲気に満ちています。元々この車両がデビューしたのがバブル真っ只中の1991年ということも少なからず影響していそうです。
デッキ


デッキの「非常口ピクトグラム」(左/上)と貫通扉のガラスに残る「A寝台」の文字(右/下)。
全国にいくつかある「静態保存の宿泊できるブルートレイン」は、法令上は「建造物」としての扱いのためこのピクトグラムが設置されています。その点、この「ブルートレインあけぼの」は(完全に静態保存ではなく)「一応動けるブルートレイン」ですが、法律上どのような扱いになっているのか気になるところです。
おまけ:「電源車」


「ブルートレインあけぼの」の特徴に、電源車も一緒に保存されて稼働している点が挙げられます。写真がその様子。ヘッドマークはやはり「あけぼの」ですが、こちらは昔ながらの文字のみのそれを掲出しています。
(電源車がない)他のブルートレイン施設では、車内に家庭用クーラーを新設するなどして現役当時とは雰囲気が変わっている場合がほとんどです。これは、客車側の電気系統が電源車からの電力供給を前提に作られており、電源車以外からの給電が困難なためだそう。
しかし電源車がある「ブルートレインあけぼの」なら、客車の冷房その他電気系統の設備は、ほぼそのまま使えます。ここを訪れた時に初めて知った「電源車ごと持ってきて保存すれば車内の改造は少なくて済む」というのは、本当に目からウロコでした(笑)。


側面の様子(左/上)。小坂駅ホーム上では発電機を止めてホーム設置のコネクタ(右/下)から電力を供給しています。ディーゼル発電機は「ブルートレインあけぼの」の客車が、ホーム上以外の場所にいる時に稼働しており、タービンの回転音でしょうか、あの「ガンガンガン」というやかましい音も聴くことができます(笑)。
寝台車の保存車は(宿泊できないものも含めて)全国に存在しますが、電源車の保存車、かつ現役で稼働しているのは「ブルートレインあけぼの」が今や唯一の存在です。訪れた時はぜひ、主役の寝台車を盛り上げる“名脇役”の姿も見てあげてください。
このページは3ページ構成です。次は>>B寝台「ソロ」編です。
>>B寝台 編もご覧いただけます。
概説
デビュー年:2015年10月(小坂鉄道レールパークでの営業開始)
「ブルートレインあけぼの」とは、秋田県鹿角群小坂町に存在する「小坂鉄道レールパーク」の宿泊施設。かつて「あけぼの」として使用されていた寝台車3両と電源車1両を譲り受け、2015年10月より宿泊施設としての営業を開始した。
編成は4両で、開放型B寝台、B寝台「ソロ」、A寝台「シングルデラックス」及び電源車1両で組成される。「ソロ」「シングルデラックス」に宿泊でき、開放型B寝台は談話室として用いられている。
毛布、シーツは宿泊料金に含まれているほか、小坂鉄道レールパーク内にシャワー施設があり、宿泊者は無料で利用できる。
昼間は小坂鉄道レールパーク内の車両展示場(ホーム突端)に展示されているが、チェックインの受付が始まる前の16:30頃に小坂駅のホームに機関車牽引で移動される際、宿泊者は「動く寝台車」に乗車することができる。
実際に動いている寝台車に乗車できるのは本施設が唯一(2016年10月現在)。
また、電源車であるカニ24を実際に「電源車」として用いているため、車内の空調などはそのまま使用されており、内装が現役時代と何ら変わりなく保存されている点も特筆に値する。
事前に予約することで朝食弁当の注文ができる(有料)ほか、飲食店やコンビニが徒歩圏内にある。
なお、営業期間は4月下旬~11月下旬のみで、冬季は休業となるほか、車両の整備などで不定期に営業休止となる場合がある。なお、近年は新型コロナウイルス感染拡大によりブルートレインの宿泊受付は停止されており、2023年秋以降の再開を目指しているとのこと。